SFホラー好きならば「The Thing」

遊星からの物体X ファーストコンタクト

『遊星からの物体X ファーストコンタクト』(原題: The Thing)は、2011年に公開されたアメリカ合衆国のSFホラー映画です。1982年の映画『遊星からの物体X』の前日談を描いています。日本では当初は『遊星からの物体X ビギニング』の邦題でしたが、『遊星からの物体X ファーストコンタクト』へとタイトルが改称されました。

日本での公開は、アメリカでのDVD・ブルーレイの発売後になる2012年に公開されました。1951年版や1982年版のリメイク?!と思われていますが、1982年版の冒頭で触れられたノルウェー調査隊の「物体X」と円盤の発見、隊の全滅、生き残った2名の隊員が犬に姿を変えて逃げ出した「物体」をヘリコプターで追跡するまでが語られる前日談です。

82年版の前日の話ということでもあるので、本作オリジナルの要素を加えながらも、建物の構造や位置関係、顔が二つに割れた異様な焼死体、氷の下のUFOが映った記録映像、爆破された小屋の跡、内側をくり抜かれた巨大な氷塊、壁に刺さった斧、氷漬けの自殺死体など1982年版で登場した物や映像などの整合性が図られています。また、そのままオマージュしたシーンやアイテムも多く登場しています。

オランダのCFディレクターで劇映画を手掛けるのは初となる、マシーズ・ファン・ヘイニンヘンJr.が初監督としてメガホンを取りました。ジョエル・エドガートンやウルリク・トムセンといった男性隊員役に加えて女性もメアリー・エリザベス・ウィンステッドとキム・バッブス(カナダの女優/声優)の2名が出演しています。82年版で「犬」の効果を担当したスタン・ウィンストンのもとで『エイリアン2』などに携わったアレック・ギリスとトム・ウッドラフJr.率いるアマルガメイテッド・ダイナミクスが「物体」の造形・操演を手掛けています。

本作の「物体」の表現には、アニマトロニクスや操演、着ぐるみをベースにしています。それらを補完する形でCGによるVFX(視覚効果)が利用されています。過去作よりも表現が多彩になっているので、より活動的で獰猛な「物体」を描く事が可能となりました。その反面では、過去作で多用されていた体液やストップモーションによる特撮が本作では控えられているのが特徴となっています。人体が混ぜ合わされたデザインなどは82年版を踏襲しています。そして咆哮(ほうこう・雄叫びや遠吠え)なども82年版を加工したものが多用されています。ポスターデザインも同じく「防寒服を着て顔が誰なのか判別出来ない両手を広げた人物」というデザインも同様で、「物体」の細胞が寄生主の細胞を捕食・なりすますプロセスがCGIにより描写された点も82年版にならう結果となっています。

「物体」の特質を決定付ける重要な場面が撮影されたのですが、本編には採用されませんでした。撮り直された点も82年版と同様で、「物体」に惨殺されながら増殖~同化により数分で蘇生した人物、宇宙船のパイロットなど精巧なアニマトロニクスや高度な特殊効果が準備されつつカットされましたが、本編には残っていません。

映画のあらすじ

舞台は南極です。1982年、ノルウェー南極観測隊が氷の下の巨大宇宙船を発見しました。古生物学者のケイトは、アメリカ人とノルウェー人とで構成された国際探査チームに招集されて南極大陸を訪れます。その目的は氷の下から発見された巨大宇宙船と地球外生命体の調査のためでした。

基地に搬入された氷漬けの地球外生命体を生態調査をすることになりました。基地の隊員たちは世界的大発見に喜んでいましたが、その夜、氷を破砕して地球外生命体が蘇生し施設外に逃走します。生命体はノルウェー人が飼っていた犬を襲って殺害、更には隊員の一人を襲って倉庫に逃げ込もうとしましたが、隊員が放った燃料に放火して、生命体は倉庫ごと焼却されました。

隊員たちは焼却された地球外生命体の死骸を解剖します。そして、生命体の細胞は依然として生きていることを確認するのでした。また、襲った隊員を体内で取り込んで、その姿に擬態する生態までもあることが明らかになりました。更には生命体が擬態した隊員の骨折した骨に埋められていた金属プレートが、生命体の体内から見つかりました。地球外生命体は、細胞ではない金属製のプレートは同化・複製することが出来なかったということです。

隊員たちの数名がヘリコプターごと他の基地へ移動することになりました。ヘリが飛び立ったその時に、ケイトが施設内のシャワールームで大量の血痕と共に、歯の詰物の破片を発見します。ケイトは直ちに離陸したヘリに基地への帰還をうながしますが、時は既に遅く、隊員の一人に擬態化していた生命体が姿を現して、ヘリは墜落してしまいます。

観測隊の多数の隊員たちは、基地からの避難をすることに意見の一致を見るも、ケイトは「もうすでに隊員の誰かに生命体が擬態している」という意見を主張して、生命体に立ち向かっていくことを促します。

誰が本物の人間で、誰が「生命体」=The Thingなのか?!隊員達を疑心暗鬼と恐怖が襲うのでした。

第3作目

1951年版と1982年版と比較されるこの作品ですが、1951年版と1982年版を振り返っていきましょう。

1951年版『遊星よりの物体X』(原題:The Thing from Another World)

1951年4月6日米公開 上映時間 87分 1952年5月1日 日本公開 製作国 アメリカ

監督:クリスチャン・ネイビー  製作:ハワード・ホークス 原作:ジョン・W・キャンベル・Jr  脚本:チャールズ・レデラー 出演:ケネス・トビー、マーガレット・シェリダン、ロバート・コーンスウェイト、ダグラス・スペンサー、ジェームズ・アーネス、ジェームズ・R・ヤング

1982年版 『遊星からの物体X』(原題:The Thing、別題:John Carpenter's The Thing)

1982年6月25日米公開 上映時間 109分 1982年11月13日 日本公開 製作国 アメリカ

監督:ジョン・カーペンター 製作:デヴィッド・フォスター、ローレンス・ターマン、ラリー・フランコ原作:ジョン・W・キャンベル・Jr  脚本:ビル・ランカスター 音楽:エンニオ・モリコーネ 撮影:ディーン・カンディ 特撮:アルバート・ホイットロック  特殊効果:ロブ・ボッティン 出演:カート・ラッセル、A・ウィルフォード・ブリムリー、リチャード・ダイサート、ドナルド・モファット、T・K・カーター、デヴィッド・クレノン

2011年版 『遊星からの物体Xファーストコンタクト』(原題:The Thing)

2011年10月14日米公開 上映時間 104分 2012年8月4日 日本公開 製作国 アメリカ・カナダ

監督:マティス・ヴァン・ヘイニンゲン・Jr   製作:マーク・アブラハム、他 原作:ジョン・W・キャンベル・Jr 脚本:エリック・ハイセラー 出演:メアリー・エリザベス・ウィンステッド、ジョエル・エドガートン、ウルリク・トムセンエリック、クリスチャン・オルセン、アドウェール・アキノエ=アグバエ、ジョナサン・ウォーカー

元々、第2作目のジョン・カーペンター監督版の『遊星からの物体X』は1951年度版の『遊星よりの物体X」のリメイク版です。51年度版『遊星よりの物体X』は、今回の作品と同じように、発見したエイリアンが蘇って襲ってくるという話なので、今回の映画のほうが1951年度版の『遊星よりの物体X』に近いといえます。1982年版のカーペンター監督版の設定上のほうが、むしろ1952年版『遊星よりの物体X』の後日談的な構造になっています。

それはなぜでしょうか?!それは1951年版『遊星よりの物体X』の半分はパクッタ映画とも言える、あの「エイリアン」が大ヒットした時期に近いからです。製作の時期が大ヒットした「エイリアン」ととても近かったので、設定を同じとしてそのままリメイクしてしまうと、その当時「エイリアン」によく似せたパクリ映画と同じように思われてしまい、二番煎じのB級映画の一本とされてしまう危険があったからです。そこであえて『The Thing』と同じタイトルにして、こちらがリメイクですよ~と言いたいのかもしれません。

1982年カーペンター版で登場した「ノルウェー基地の惨劇」がどのように起きたのか、その前のことを描いた作品なので、カーペンター版にダイレクトに直結していくという意味でも、1982年カーペンター版へのオマージュがあちらこちらへと盛り込まれている意味でも、1982年カーペンター版のファンにはたまらない作品とされています。

1982年カーペンター版では、いろいろな角度から「ノルウェー基地に何が起きたか?!」語っているのですが、事実は謎です。もちろんいろいろな場面をみて推測できるのですが、はっきりと明確に語られているわけではありません。この作品は、その真相に焦点を当てています。

1982年版登場のディテール

  • ノルウェー基地は焼け焦げて壊滅している
  • 氷漬けの死体には首をかききった姿
  • 壁にささった斧
  • 謎のクリーチャーの焼死体は、まるで人体が融合したかのように顔が2つに割れている
  • 氷原に顔を出した状態で、爆破された円盤
  • 犬を追いかけて射撃するヘリコプター
  • 内側をくり抜かれた巨大な氷の塊
  • 氷の下のUFOが映っている記録映像

上記のこのディテールが、この作品をみるとパズルのようにはめ込まれていきます。こんなことがあったから、こうなっていたんだ・・と納得できるように仕上がっています。そこは細部にまでパズルは出来上がっていて、1982年版に一瞬だけ登場するノルウェー隊員たちの記念写真の写真があります。写真をみると、ノルウェー隊員のキャラクターの雰囲気までもとても忠実に再現されています。

そして、最終的に登場してくるクリーチャーですが1982年版ノルウェー基地で拾った焼死体として登場しているクリーチャーそのものです。

ただ、クリーチャーを見る時に最初は違和感を感じるかもしれません。それは、1982年版では物体Xがあまり移動しないのですが(CGなどの技術的問題から)この作品でのクリーチャーはとってもよく動き回るので違和感を感じます。物体Xはこんなによく動けるんだ?!と思うかもしれませんが、グロテスクぶりは1982年度版よりも確実にアップしています。

最後のエンドロールには、脱走した犬、それをヘリで追いかける隊員のシーンが挟まります。この作品のラストがそのまま1982年カーペンター版の冒頭に繋がる構造で終わるという点が妙に嬉しく感じます。

本編で見ていた「あの人」が1982年カーペンター版で犬を追いかけてた「あの人」とこの作品を見て気付いたときには、なるほど~と例の音楽(エンニオ・モリコーネによる1982年エンディング曲)がかかっていることもあるので余計におおっそうかぁ?!と思える終わり方になっています。

SFホラー好きならば「The Thing」